専門家はいるが、専門家に辿り着く事ができる人は少ないという話
お久しぶりです。
今回はなかなかハードな話を紹介します。
医師は毎日のようにクソみたいに長い論文を読み漁り、目の前の症例に適応できるのか否か、疫学的には典型的な症例かなどを常に検討します。
クソみたいに長い論文(2回目)はたまには役に立つ知識を教えてくれるし、
「それでは、こういう対策ができるんじゃないか?」という思考ができる点でも役に立ちます。
クソみたいに長いけど(3回目)。
まずは参考文献より
Systematic literature review on the delays in the diagnosis and misdiagnosis of cluster headache
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC6329709/
群発頭痛という疾患についてのメタ解析です。
15のあらゆる研究の指標を抽出して解析した論文になります。
英語が苦手な方はページ丸ごとGoogle Chromeの翻訳にブチ込んでください。私も苦手なので毎回そうします。
さて、今回の中身は
「群発頭痛のような多彩な症状を来す疾患は、そもそも頭痛専門の専門医まで辿り着くことが難しい」
という内容になってます。
というのも、群発頭痛に限らず、非典型的(非特異的)な症状が多い疾患というものは、なかなか正しく診断されることが難しいということです。
例えば、風邪ひとつとっても
「発熱、倦怠感、咳、鼻水、頭痛、喉の痛み」
が全部揃っている事なんて基本的にはありません。
もちろん発熱だけでも風邪と言われた人はたくさんいることと思います。あるいは、頭痛だけでも。
その中に、ときどき怖い疾患が含まれていることがあるのです。
その一例が1次性頭痛の一つである群発頭痛です。
簡単に紹介しますと、
「目の奥がえぐられるような頭痛1日3回ほど、それが1ヶ月ほど続く」
というものです。随伴する症状として有名なのは鼻水、鼻閉、涙、結膜充血などです。
疫学的には20〜40歳に多く、有病率は0.01%〜0.1%ほどとされています。
さて、あなたはこのような頭痛を経験した場合どこの病院に行くでしょうか?
鼻水が出るから近場の内科?
鼻閉があるからアレルギー専門医?耳鼻科?
涙、結膜充血があるから眼科?
はたまた、頭痛だから脳外科?神経内科?
一番確実なのは神経内科です。頭痛専門医に見てもらうのがベストです。
しかしながら、上記の論文では、神経内科に最初から行った人は8%ほどとされています。
多かったのは一般内科や眼科、耳鼻科でした。
そりゃそうだ!!(小声)
それほど、ベストな科に見てもらうのは難しいのです。
医学的知識というのは、家庭の医学程度じゃ養えません。(ときどき家庭の医学でマウントを取りに来る患者さんがいらっしゃいますが…
だからこそ、オンライン診療がこれからは絶対に大事になってくる。そう思うのです。
コロナのせいで、できるだけ対面診療を避けたいというのが正直なところです。
だからこそ、訳のわからない人たちが外来に殺到するのは避けたい。
(「髪が抜ける!」と言って脳外科に受診するヤベェ人、「虫さされ」で救急科に来る人など)
来るべき疾患の人が来るべき科に来なきゃ、そのうち医療崩壊します。コロナ云々の前にも。
だからこそ、ジェネラリストが求められる。
総合診療科の立場としてはそれが正しいと思います。
総合診療科は広く知識を身に着け、どの科になるか分からない症例を診たり、あるいは正しく専門医に紹介したり、などという業務があります。
まぁ話が逸れましたけど。
つまりは、仕分けする人が必要って話です。
医師と同じレベルの医学的知識を持つ人…いや別に医師でも良いんですけど
紹介業務みたいな専門家が必要だと思うんですよ。
コンサルテーション専門家?みたいな。
そういう仕事も面白いかな、なんて思います。